【一般公開】固定チョークの優位性について

 

【1挺でマルチに活躍出来る交換チョーク式】

トラップ、スキート、フィールド競技のクレー射撃、四つ足猟や鳥猟など、ほぼ全てにエントリー出来るバツグンの対応力が魅力の交換チョーク式。

交換チョーク式の自動銃やスポーティングモデルの銃は特にエントリーモデルとして多くの問い合わせが中京にも来る。

しかしながらこれら交換チョーク式の銃身にも弱点は存在する。その一部を紹介しよう。

※画像はBeretta社の交換チョーク

 

【交換チョーク式の製造公差】

「製造公差」と聞いてピンとくる人は少数だと思われる。少々雑だが交換チョークを実際に作るイメージでやってみてほしい。

まず紙とペンを用意し、フリーハンドで出来るだけ精密に同じ ○(まる)を5個書き、出来上がった5つを比べてみてほしい。きっと5つとも同じ形でもなく太さ、大きさ、歪みなどの誤差があるはず。

実は現代の工業技術でもチョーク製造時や銃口に施す交換チョークの飲み込み加工時、メスネジとオスネジを切る作業には同じように極小さな誤差が発生する。この製造した時にどうしても発生する小さな誤差を「製造公差」と言う。

※画像は規定の雷管着管深度より深く製造されてしまった実包によって撃針の先だけが触れる形になり不発に。実包も工業製品であり例外なくどんな弾でも製造公差は発生する。

交換チョーク式の銃身で高い精度を出すには限界がある】

ざっと製造工程をイメージしてみよう。

固定チョークのような銃身にまず交換チョークを挿入する飲み込み部分を作る為に銃身の内側を削る工程をしなければならない。銃身内径の真(センター)から少しでも軸がズレてしまえば精度が大きく落ちてしまう。かなり難易度の高い加工である。

次に銃口内部へ刃物を使ってメスネジを切る工程だが、ある程度公差(寸法の誤差)を許容しなければならない。

何故なら、新品チョークが5本付属するような上下二連散弾銃であれば、「5種類の製造公差を持った交換チョーク」を許容出来るようにメスネジを若干大きく削って銃身を仕上げなくてはならない。上下二連の場合は銃身が2つある為上下の銃身にそれぞれの製造公差が生まれる。

「ある程度銃口の公差を許して製造しなければならない」。それが交換チョーク式銃身の1つ目の弱点なのである。

【2つ目の弱点 バレルバイブレーションの増加と熱膨張・収縮率の増加による安定性の低下】

バレルバイブレーションについてはライフルの時に詳しく紹介する。ここではざっくりと説明する。

散弾銃でもライフル銃でも弾を発射する際に発生する火薬ガス圧力の膨大なエネルギーによって、銃身が激しく振動して波打っている。この振動は命中精度に大きく影響を与え、一般的に短く太い銃身であればバイブレーションの幅(暴れ具合)を抑えられる傾向がある。さらに、太い銃身(肉の厚い銃身)には熱による膨張や収縮を低減する効果もある。

これによって、自動銃のスラッグ銃身は固定チョーク式で銃身が散弾用の銃身(リブ銃身)より太く短く設定されている。

※短く設定される理由は他にもあるがここでは割愛

交換チョーク式銃身の銃口は交換チョークを飲み込む長さ分だけ銃身の肉が薄くなる点から、固定チョーク式の銃身よりも銃口付近のバイブレーション幅が増加し易く、熱による膨張・収縮が起こり易い。

短い間隔で発射するクレー射撃競技などでは銃身に熱が蓄積され散弾(ショット)パターンやコロンが安定しにくいという特性がより顕著になる。

【スキート専用銃は交換チョーク式で良いのか?】

実はここまで紹介した交換チョーク式の弱点は「20メートル前後の近距離の標的」であればほぼ考えなくて良いぐらい微妙なものである。スキート競技の標的はおおよそ18m~20mと近く、交換チョーク式の対応力という強みの方が勝る競技種目と言えるだろう。

※スポーティングモデルとは、クレーがどこからどのように飛んでくるのか、どのような角度で飛んでいくのか予測が難しい海外のスポーティング競技(クレー射撃のゴルフとも呼ばれる)向けに発売されているモデル。交換チョーク式の強みである「対応力」が発揮される。

※厳密にはスキートモデルとスポーティングモデルの銃身の設計には多少違いがあるが、また別の機会に説明する。

【交換チョーク式の弱点が強く影響されるのはトラップ射撃】

なぜベレッタ、ペラッツィ、アントニオゾーリ、ケメンなどオリンピック競技の決勝戦で顔を出す上下二連散弾銃のトラップモデルが固定チョーク式なのか。

それは少しの誤差が遠くなればなるほど大きくなる特性上、「35メートル以上の遠方の標的」に最大で2回発射するトラップ競技においては「高い精度と安定性を有した固定チョーク式銃身」の方が有利だからである。

※狩猟において多目的に使用出来るキャンチレバーの短い銃身や特定のスラッグ弾で使用することを想定して発売したモデルなどの例外はある。

他にも、固定チョーク式銃身は、交換チョークにはない銃身の製造過程があるのだが、そちらは尺の関係で今回カットした。

銃器設計で優劣が大きく左右されるほどクレー射撃は単純でなく、実際は射手の腕やメンタルの方がスコアに大きく影響する。

勿論、カッコいいガスポート付チョークをこの散弾銃に付けたいから交換チョーク式!という選択も趣味の世界なので大いに正解である!

あくまで高いモデルの買い物等で失敗しない為の一つの知識として、読んでいただきたい。

次回は、上下二連散弾銃の各種閉鎖機構と特性について記載する予定だが、ベレッタのフラグシップモデルもトップロックのDT11からセンターロックのSL2へ変わっている為、なるべく早く掲載したい。

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